2026年9月1日火曜日

【レポート】第2回|企画づくり強化合宿@森の家みんみん

2026年8月15日(土)〜16日(日)、那覇市立森の家みんみん(首里儀保町・末吉公園内)にて、「なは市民協働大学院2026」の第2回講座、1泊2日の企画づくり強化合宿が開催されました。

今年度はチームビルディングに力を入れ、例年より早い第2回に合宿を設定。地域ごとにチームを組み、チームとして取り組むテーマを一つに絞り、次回・第3回講座(9月1日)までの地域調査プランを立てる――そこまでを2日間で一気に進めました。講師・進行は、石垣綾音さん(合同会社みるぶん/災害プラットフォームおきなわ)、森の家みんみんの藤井晴彦さん、災害プラットフォームおきなわの稲垣暁さん・宮道喜一さん、そして事務局の宮城が務めました。


「協働マインド/視点を変えて物事をみる」

1日目の午前は、事務局の石垣綾音さんによる講座①「協働マインド/視点を変えて物事をみる」からスタート。まずは、第1回の開講式でつくったチームでの「共通点さがし」の答え合わせから。「全員、献血したことがある」という共通点を見つけたチームがあり、「献血したことありますか、ってなかなか聞かない質問ですよね」と会場が沸きました。

2日間の流れを共有したあとは、グループごとのチェックイン。「今日の調子はどうですか」「合宿に期待していること、不安なこと」を一言ずつ。順番の決め方も「さっき喋っていた中で、いちばん最後に喋っていた人から」というユニークさで、場が一気にほぐれます。

そして、この合宿の肝となるレクチャーへ。2日間で身につけてほしいのは、次の3つの視点だといいます。

  • 直感……暑い、寒い、嫌い、苦い、美味しい、大好き。人間に本能として備わっているもの
  • 理性……「おかしな形をしているけれど、なんでかな」と考える力
  • 統合的(仮)……「あなたも私も、実は気づいていなかったことに気づけるかもしれない」

理性の例として語られたのが、火山性の黒い砂のビーチの話。砂浜も生き物もみんな真っ黒で、一瞬「ちょっと気持ち悪いな」と思ったけれど、「彼らはここで擬態して生き延びるためにこうなっているんだな」と気づく。人の話を聞くときも同じで、感情的に言われて驚いても「なぜその人はそう思うんだろう」と捉え直せる、と。

いちばん分かりにくいのが3つ目です。一緒に経験した先で分かるもの。私はこちらから・あなたはあちらから見えているから、組み合わせると違う形が見える。全体像が見えてきた――そういうもの。「これを分かるために、今日は合宿をします」。

「実はこれって、皆さんがすでに持っているものではあるんです。でも、いま自分がどの視点で物事を考えているのかに気づくことが、意外と難しいんですね」

続いて語られたのが「モード」の話。体調が悪い日、誰かと喧嘩した翌日は、来るもの来るものが嫌に感じられる。あまり好きではない人と話していると、いつもなら「いいね」と言いそうなことにも構えてしまう。「そういう自分のモードに気づいてほしいんです」。

そこで行われたのが、切り替えの練習。全員で同じお題を見ながら、最初の1分は「斜(しゃ)に構えて」思いっきりけなす。次の1分は180度変えて、思いっきり褒める。 お題は「真っ白なTシャツ」。「せーの、開始!」の合図とともに、各テーブルから一斉にダメ出しが飛び交いました。

「これをやると、最初の1分と後半の1分で、自分がどれだけ違う人間になれるかが体感できます」

この「モードの切り替え」が、2日目のフィードバックワークで効いてくることになります。


森を歩いて「見えていなかったもの」を探す

続いては、森の家みんみんの藤井晴彦さんによるワークショップ「森の司令ゲーム」。末吉公園の1周約400メートルのコースを歩き、カードに示された15のお題を、制限時間内にチームで探すというプログラムです。

ルールは4つ。①見つけたらグループ全員で確認する ②決められたコースの中で探す ③触らない・取らない・隠さない ④決めた時間までに戻ってくる(1分遅れるごとに1ポイント減点)。

お題は「岩から生えている木」「右と左が違う葉っぱ」「すじだけになった葉っぱ」「緑色のカタツムリ」「クモの網」「セミの抜け殻」「オキナワモリバッタ」など。カードの説明が、そのまま沖縄の自然のミニ講義になっていました。緑色のカタツムリ(アオミオカタニシ)は、実は殻が無色透明で、中の体が緑色だから緑に見えること。樹上性なので地面にはいないこと。沖縄は落ち葉の量が非常に多いのに落葉が積もらないのは、土壌動物の分解力が桁違いに強いから――といった話が、次々と繰り出されます。

このゲーム、もともとは「1クラス30人で森を歩くと、話を聞いているのは前の10人足らずだけ。後ろの人はついてくるだけ」という課題意識から生まれたのだそうです。参加者を受け身にさせない設計とは何か。そういう意味では、企画づくりのケーススタディでもありました。

印象的だったのは、藤井さんのこんな言葉です。

「子どもは誰かが見つけると、みんな同じ場所を同じやり方で探しはじめる。せっかくこれだけ人数がいるのに、同じパターンしか見えない。皆さんは大人なんだから、頑張ってください」

さらに、オオジョロウグモの網も、セミの抜け殻も、オキナワモリバッタも、以前よりずっと減っているという話も。「いる/いない」ではなく「減っている」と語れるのは、同じ場所を長く見つづけている人だけです。地域を見るとはどういうことか、森の中で体感する時間になりました。





ゲームのあとは「振り返り(盲点を探す)」「思い込みの再確認」。見えているつもりで見えていなかったものを、それぞれが確かめました。

「現状」「問題」「課題」を切り分けて考える

昼食をはさみ、午後の冒頭は、事務局の宮城による「ロジックモデルと課題設定」。ここで共有された3つの言葉の切り分けが、2日間を貫く背骨になりました。

  • 現状……いま起きていること。誰がどんな状況にあるのか
  • 問題……「ありたい姿(ビジョン)」と「現状」のギャップ
  • 課題……そのギャップを解消するために取り組むべきこと

「少子高齢化が課題です」「自治会加入率の低下が課題です」とよく耳にしますが、これらはいずれも「現状(現象)」にすぎません。その現状によって誰が、どんなことで困っているのか。そこを特定しないかぎり、課題は見えてこない。だから課題は、最初から見えているものではなく、あとから立ち上がってくるものなのだと確認されました。

あわせて、第8回の企画提案までを見通すロジックモデルも共有。「課題設定 → 企画 → 評価」の全体像を示したうえで、「いくら効率的に事業を回しても、そもそもの課題設定が適切でなければ狙いとする成果は得られない」――だからこの合宿では課題設定に丸2日をかけるのだ、と位置づけが語られました。


「気になる」から「仮説」「見立て」へ

地域ごとのチーム編成を経て、続いて稲垣暁さんによる講座②「地域調査と分析」です。

「思いは大事。でも“思いつき”のままにしない。思いつきを、確信・確証に変えていく。今日はその作業の仕方を学びます」

まずは、頭の中にあるふんわりした「気になる」を、とにかく文字にして外に出す。心理学でいう「メタ認知」です。「頭の中にあるものは目に見えない。外に出すと目で見えるので、そこで客観視ができる」。そして、それを一行で「つまり、こういうこと」とまとめてみる。新聞・メディアの世界で「ナットグラフ」と呼ばれる作業です。

講義を通してモデルになったのは、架空の受講生・末吉珉珉(すえよし みんみん)さん。安謝川流域で生まれ育ち、末吉公園のホタルの幼虫のフォルムと光に惚れ惚れするという設定の、自称「仮説見立てガール」です。彼女の「気になる」はこんな具合。

「東日本を中心にクマが人里どころか市街地にも出没しているのは、気候変動も大きな要因だと聞いた。そういえば沖縄にクマはいないが、南方系のクマゼミが沖縄固有種のナービカチカチ(リュウキュウアブラゼミ)を駆逐している感じがする。だとしたら、気候変動は深刻!」

ここから、なぜそれが気になるのかという動機を掘り下げ、予備調査(=「ガサ入れのアタリをつける」)で文献や取材の当たりをつけ、仮説を立て、全体像を見立てていく。そして最終的には「温暖化を防ぐ活動と同時に、暑さに適応したまちを考える必要がある」という課題設定にまでたどり着く。この一連の流れを、受講生も自分の「気になる」で実際に書きながらたどりました。

後半のテーマは「自己覚知」。「そんなの常識じゃないか」と思いがち、根拠なく断言しがち、物事を単純化して考えがち……といったバイアスのチェックリストに目を通し、自分の思考のクセを自覚します。あわせて、地域で話を聴くときの作法として、ソーシャルワークの4つの原則(受容・個別化・非審判的態度・自己決定)も紹介されました。

そして、こんなメッセージも。「災害時の地域復興計画や再開発でも、住民それぞれの利害は合わず、衝突したり平行線をたどるのが常です。それでも議論を積み重ねていく。こうしたプロセスをたどることで、地域は強くなり、再生していきます」。これから始まるグループワークは、その地域会議のプロセスを先取り経験する機会でもあるのだと。

チームを組み、テーマを一つに絞る

続いて、宮道喜一さんの進行でグループワークへ。一人ひとりがワークシートに「取り組みたいテーマ」「地域の現状と問題」「そのテーマを設定した理由(動機)」を書き出し、チーム内で丁寧に共有したうえで、チームとして取り組むテーマを一つに絞り込みます。

編成されたのは、マカ道(真嘉比)/チーム水物(安謝・曙)/中心市街地/小禄/首里/松川・大道/那覇西(若狭・天妃・曙)/真和志南の8チーム。1日目の最後には、各チームが「いま、どの入り口に立とうとしているのか」を発表しました。新旧住民のつながり、地下水と防災、観光地ゆえの交通、子ども会と居場所、道の狭さ、子どもの遊び場、多国籍化する地域での情報共有、全世代のゆるやかなつながり――それぞれの地域の顔がくっきりと見える発表となりました。


そして17時からはカレーづくり。2チーム合同・計4班に分かれ、各自が持参したお米を炊き、各チーム10食分をつくってバイキング形式で味わいました。夜はフリータイム。末吉公園までホタルを探しに出かける受講生の姿もありました。



2日目:思い込みにならない問題設定

6時半のラジオ体操と朝食、清掃を経て、2日目のグループワークへ。この日のゴールは「第3回講座までに、いつ・誰が・何を調べるのか」を決めることです。

冒頭、宮道さんが投げかけたのは一つの事例でした。地域に住む80歳の一人暮らしのおばあちゃんの「最近、歩いて10分のスーパーに買い物に行くのが、本当にしんどくてねぇ……」というつぶやき。さて、何が必要でしょうか。

チームからは、買い物代行、移動スーパー、ネットスーパーの講習会、コミュニティバス……とアイデアが出ます。ところがこれ、実は意地悪な問いでした。

「『何が必要だろうか』と聞いてしまっているので、全部が“取り組むべきこと”の意見になる。いきなり答えを出す前に、『なぜ、しんどいの?』と聴いてあげたい」

聴いてみると――足腰は丈夫。荷物も軽い。しんどい理由は「途中にあった公園のベンチが老朽化で撤去され、一休みできる場所がなくなったから」。しかも本人は「スーパーのレジの人とおしゃべりして、帰りに公園で休むのが毎日の生きがい」だと言うのです。

良かれと思った買い物代行は、おばあちゃんから外出の機会とおしゃべりを奪い、家に閉じ込めてしまいかねない。本当の問題は「道の途中に休める場所がないこと」だった――。思い込みで問題を設定し、解決策に飛びつくことの怖さを、鮮やかに示す事例でした。

もう一つ、「理不尽な校則はなぜなくならないのか」という事例も。表面的な事象の下には「昔の名残」「教師が管理しやすいから」「地域からのクレームを恐れて」といった大人の都合の構造がある。だからこそ「それは、一体誰のためにやっているのか?」と問い、当事者にも管理する側にも話を聴きにいく。すると「先生も生徒も苦しめている“地域の同調圧力”をどう変えるか」という、より本質的な課題が見えてくるかもしれない。

そして、この日いちばん強調されたのが、「They」から「I/We」への転換でした。「子どもたちがかわいそうだから」ではなく、「理不尽なルールに思考停止で従うことを強いる地域で、私自身が子育てをしたくない」「そんな同調圧力の強い町は、私にとっても息苦しい」。あなた自身の痛みに、どうつながっていますか――と。

「〇〇が困っている」という大雑把な見立てから、具体的な顔が浮かぶレベルまで解像度を上げる。それでもまだ妄想(仮説)であるという自覚を持つ。だから調べる。地域を知る3つのアプローチ(既存のデータ・資料/ヒアリング/フィールドワーク)が示され、「数えたら、必ず比べる。隣の校区と、那覇市全体と、10年前・20年前と」というコツも共有されました。

8チームの調査計画発表と、3色の付箋

午前の後半は、チームごとにリサーチプランづくり。校区別の統計データも配布され、「現状」と「問題」を行ったり来たりしながら、9月1日までに何を調べるかを詰めていきました。

10時半からは各チーム3分の発表です。聴く側にも役割がありました。1チームにつき必ず3枚の付箋を書く、というルール。初日に「白いTシャツ」で練習した、あのモードの切り替えの本番です。

付箋の色書くこと
ピンク斜に構えた質問・コメント
水色斜に構えないコメント
黄色発表を聞いての提案

「これは他のチームへのプレゼントです。自分たちにも返ってきますから、必ず書いてください」。会場のあちこちで、辛口の指摘とあたたかい提案が飛び交いました。

発表された調査プランも、実に具体的です。8月24日夕方に安謝エリアを歩く(チーム水物)、8月28日の放課後に小学校区を回る(小禄)、危ない場所の写真を日常的にグループLINEで共有する(首里)、モノレールに乗るたびに混み具合をメモする(中心市街地)、公園で子どもの様子を観察する(真和志南)、子どもの居場所を運営する団体に聴きにいく(松川・大道)、その日の夕方にある地域の豊年祭でメンバーと相談する(マカ道)、ボランティア団体に「本当は何を望んでいるのか」を聴きにいく(那覇西)――。



講師からのメッセージ

最後に、講師陣から受講生へのメッセージ。

稲垣さんからは、「誰が何に困っているのかを突き詰める。『子どもが無関心』というけれど、何に対しての無関心なのか、子どもとは誰なのか」。そして、自治会が持つ「字誌」を読むこと、沖縄にたくさんある大学の先生を頼ること、地域の資源を上手に使うこと。さらに「調査は自分たちのためだけのものではありません。調べたものは必ずお返しする。相手が知りたいこととかみ合えば、協力度もぐんと高まります」という助言もありました。


宮道さんからは、「『高齢化が進んでいる』はあくまで現象。それによって誰が何に困るのかまで踏み込んでほしい」。そして「調べていくと『全然違うじゃん』ということがたくさん出てきます。それは、違うと分かってよかったねという話。仮説どおりの声にだけ飛びつかず、フラットにいろんな声を受け止めてください」。最後に「皆さんは地域の当事者ですが、このプログラムの中では地域で学ばせていただく立場でもあります。地域への敬意を忘れずに」と結ばれました。

石垣綾音さんからは、AIを「壁打ち相手」として使うコツも紹介されました。「この地域の課題は何ですか」と聞くのではなく、「自分のこの解釈にバイアスがかかっていないか」と問いかける。稲垣さんのバイアスのリストを読み込ませたうえでコメントをもらう。そんな使い方なら、思考の幅を広げてくれるはずです。

おわりに

「現状」「問題」「課題」を切り分ける。思いつきを、確信に変える。誰が何に困っているのか、解像度を上げる。そして、それを「私たちの痛み」として引き受ける――。

2日間で受け取ったものは、決して軽くありません。それでも、森を歩き、カレーを囲み、夜遅くまで語り合った時間があったからこそ、チームはもう「一緒に地域へ出ていく仲間」になっていました。合宿を早い時期に置いた今年度の狙いは、ここにあったのだと思います。

次回・第3回講座は9月1日(火)、なは市民活動支援センターにて。各チームが実際に地域を歩き、聴いてきたことを持ち寄ります。「これは本当に課題といえるのか」を深掘りしていく回です。

まちに出た8チームが、どんな声を持ち帰ってくるのか。楽しみです!