2026年6月21日、なは市民協働プラザにて、なは市民協働大学院2026の公開講座が開催されました。参加者は49名。
講座では、大学院のプログラム説明に続き、修了生団体による活動紹介、そして南信乃介氏(NPO法人1万人井戸端会議 代表理事/前・繁多川公民館 館長)と宮城潤氏(一般社団法人まなびとまちと 代表理事/前・若狭公民館 館長)によるトーク「那覇における地域づくりを考える」が行われました。司会は石垣綾音氏(合同会社みるぶん 共同代表)が務めました。
なは市民協働大学院とは
なは市民協働大学院は、地域課題の解決に向けた動きをつくり出す「コーディネーター的視点を持った人材」の発掘・育成を目的に、那覇市が主催する講座です。
前身にあたる「なは市民大学」は2009年に開講し、翌2010年に「なは市民協働大学」へと改称されました。その上級者編・実践編として2015年度に「なは市民協働大学院」が始まり、2016年度には那覇市第5次総合計画に対する市民意見を取り入れる場としても機能しました。
受託団体はこれまで、南信乃介氏がアドバイザーを務めた2017年度、南氏の1万人井戸端会議がまちなか研究所わくわくと連携して受託した2018年度、宮城が事業統括責任者を務めた地域サポートわかさが受託した2019〜2025年度を経て、2026年度は宮城が新たに立ち上げた一般社団法人まなびとまちとが受託しています。この間、修了生は各地域・各専門分野で活動を続け、協働によるまちづくりを推進する人材の裾野を広げてきました。
講座冒頭では、那覇市の地域づくりを取り巻く状況についても説明がありました。
自治会加入率は13%台まで低下しており、市内の約37%のエリアには自治会そのものが存在しません。
こうした状況の中、地域づくりの新たな枠組みとして「小学校区まちづくり協議会」の設立が進められており、現時点で17協議会・5準備会が立ち上がっています。
設立から10年を経て、その位置づけは「組織をつくること」から「ゆるやかなつながりを育むプラットフォームにすること」へと重点が移りつつあるとのことです。
こうした流れを踏まえ、那覇市は今年3月、市民参加のワークショップや庁内議論を経て「那覇市地域づくり推進方針」を策定しました。
なは市民協働大学院は、この方針に基づき地域コミュニティで活躍し、地域コミュニティをつなぐ人材を育成するプログラムとして位置づけられています。
大学院が掲げるコンセプトは「じっくり・しっかり・ちゃっかり」の3つです。地域の現状を丁寧に観察し課題を発見・定義する「じっくり」、発見した課題をもとに実現可能な企画を立案する「しっかり」、課題に取り組みながらも自分自身や周囲を楽しませ仲間を増やしていく「ちゃっかり」。
これらは、地域で活動する人々が自然に踏んでいるプロセスを体系立てたものだと説明されました。
2026年度は、例年より早い第2回に1泊2日の強化合宿を組み込み、早期のチームビルディングを図る点が特徴とされています。
全8回の講座を通じて、まち歩きによる地域調査、課題設定、企画づくり、コミュニティ・オーガナイジングの手法などを学び、第8回の最終成果発表会・修了式に至る構成となっています。
修了後も、東京大学主催の地域課題解決アイデアコンペ「COG・チャレンジ‼オープン・ガバナンス」への挑戦など、活動の継続を後押しする姿勢が語られました。
OB/OG活動紹介
講座の中盤では、修了生による活動紹介が行われました。
首里石嶺地域で活動する「ミネコヤ」は、2023年度・2024年度の修了生を中心に2024年から活動する団体です。
自治会が組織されていないエリアが多く、子どもの居場所も少ないという石嶺地域の課題を受け、放課後の子どもの居場所「わくわく嶺っ子クラブ」を企画・運営しています。拠点は、これまで利用が少なかった石嶺町民会館を主に活用し、2025年度の夏休みには1週間にわたって施設を朝から夜まで開放し、ワークショップや映画上映会、防災キャンプなど多様な企画を実施しました。
PTAや映画監督、アート系団体など、常に誰かと連携しながら活動する姿勢を大切にしているとのことです。COG2024ファイナリストに選出されています。
真和志地域で活動する「真和志well-being」は、5名のまちづくり協議会関係者によるチームです。
真和志小学校周辺で保護者の送迎による交通混雑が発生し、通学路の安全確保が課題となっていることを受け、2025年のハロウィンに地域住民とともにコスプレ姿での旗振り活動を実施しました。
この経験から生まれた企画が「Let's てくてく登下校‼」で、地域全体で子どもが歩きたくなる環境づくりを段階的に進めています。COG2025では全国63チーム中の最終審査13チームに選出され、「JIPDECサポーティングパートナー賞」を受賞しました。
続く質疑応答形式のセッションでは、両チームからフィールドワークやヒアリングを企画づくりの軸に据えたこと、地域住民や既存の組織との連携が比較的スムーズに進んだこと、拠点となる場所の有無が活動の継続に影響することなどが語られました。
市民活動を継続する秘訣としては、出入りしやすい活動の形にすること、無理のない最小単位から始めることが挙げられました。
対談「南信乃介×宮城潤 那覇における地域づくりを考える」
後半は、南信乃介氏と宮城潤による対談に移りました。
両氏の付き合いは約20年に及び、南氏が20代半ば、宮城氏が30代半ばで若狭公民館の館長になった頃、社会教育の勉強会で出会ったのが最初とのことです。以来、那覇市の公民館長仲間として、それぞれ異なる立場から那覇のまちづくりに関わり続けてきました。
宮城氏は社会教育とは異なる「アート」の領域(前島アートセンター)から地域づくりに入ってきた経歴を持ちます。一方、南氏は子ども会・ジュニアリーダー活動を通じて幼少期から地域づくりに触れ、大学でも持続可能なまちづくりを学ぶなど、社会教育の道を歩んできました。
両氏は、活動へのアプローチの違いについても語りました。
宮城氏は自らを「物事を斜めに見るひねくれ者」と表現し、光が当たっていない層、たとえば在住外国人やシングルマザーなどへの気づきを起点に活動を展開するタイプだと述べました。
これに対し南氏は、地域の人々が大切にしてきたもの、たとえば豆腐づくりの歴史のようなものを起点に、そこに共感する人たちを巻き込みながら活動を広げていくタイプだといいます。
両氏は、どちらのアプローチが優れているというものではなく、地域性や個性によって入り口が異なるだけで、地域づくりには両方が必要であるという点で一致しました。
具体的な事例として、繁多川公民館では地域の自治会と相談しながら民俗学的な聞き取り講座を企画したところ、住民への聞き取りが3年間続きました。
その過程で、地域内で戦後多くの家庭が豆腐づくりを営んでいたこと、それが戦後復興を支える産業であったことが明らかになり、小学校の総合学習に発展。地域住民が先生役となって大豆栽培から豆腐づくりまでを行う恒例行事へと成長したとのことです。
この取り組みを通じて、定年退職後の男性が地域活動に関わるきっかけも生まれたと紹介されました。
若狭公民館では、地域に多い在住外国人やシングルマザーなど、公民館の講座に必ずしも来ていなかった層への働きかけが紹介されました。
子育て支援団体を通じて当事者団体と連携する取り組みや、在住外国人と地域住民が出会い理解し合う機会をつくる取り組みが、コロナ禍を経て支援活動として広がっていったといいます。
活動の進め方について、南氏は、確証が持てなくても「3割ほど見えたら試しにやってみる」という姿勢で公民館活動を一種の社会実験として捉えていると説明しました。
宮城氏は、気づいたことに対して「旗を立てる」というイメージで、まだ課題として認知されていないニーズを可視化する取り組みを重視していると述べました。
必要な人材や姿勢についても意見が交わされました。
南氏は、互いに言いたいことを言い合える関係性があれば、相談先を複数持つことでどうにかなると述べました。
宮城氏は「頼りなくあること」の大切さを挙げ、自分で抱え込まず素直に助けを求められる状態が、周囲の協力や新しいつながりを呼び込むと語りました。
また、気づいたことを発信するだけでなく、それを受け取っていない人まで巻き込んで連れてくる存在の重要性も指摘されました。
学びと活動の関係については、宮城氏が「学びと活動の循環」という言葉を挙げ、知識を蓄えてから活動に還元するというよりも、実際にアクションを起こす中で必要な学びが後から生まれてくると述べました。
課題はネガティブなものではなく取り組むべきことであり、解決というよりも次々と新しい課題へと展開していくものだという見方が示されました。
南氏は、小さなアクションを起こした経験を持つ人が、その経験を通じて地域環境をより良い方向に変えていく力になると述べ、コロナ禍では支援を受けた当事者自身が新たな担い手として動き出す様子が見られたと振り返りました。
今年3月に策定された「那覇市地域づくり推進方針」についても触れられました。
南氏は方針の中のコラムで繁多川公民館エリアの自治の実情を執筆したことを紹介し、宮城氏は、地域だけで頑張るのではなく行政とも協働しながら進めていく点が方針の重要なポイントだと述べました。
方針の概要版に掲載されている「新しい地域のつながりのイメージ」図について、宮城氏は自身が長年提唱してきた「ゆるやかなつながり」の考え方が採用されたものだと説明しました。
単一の地域組織への加入を前提とするのではなく、一人ひとりが興味や関心に応じて複数のコミュニティに緩やかに属し、それらが重なり合うことでセーフティネットとして機能するという考え方です。
近況と今後の展望
南氏は今年3月に繁多川公民館の館長を退任しましたが、指定管理者であるNPO法人1万人井戸端会議の代表理事は継続しており、引き続き公民館に顔を出しているとのことです。今後は、妊娠・出産や看取りなど、地域との関わりが薄くなりがちなライフステージにおいて、住み慣れたコミュニティで安心して関わり続けられる地域のあり方に取り組みたいと語りました。
宮城氏も同じく今年3月に若狭公民館の館長を退任し、一般社団法人まなびとまちとの代表として、なは市民協働大学院の企画運営に加え、那覇市の地域づくりコーディネーター業務を受託していることが報告されました。
公開講座は、なは市民協働大学院のプログラム紹介にとどまらず、修了生団体の具体的な活動事例と、公民館長として20年にわたり那覇の地域づくりに携わってきた両氏の対話を通じて、那覇における地域づくりの現在地を振り返る機会となりました。
なは市民協働大学院2026は、受講生を募集しています。
なは市民協働大学院2026
申込締切:7月10日(金)まで
受講料:5,000円
定員:30名 ※応募多数の場合、申込内容等を勘案し選考します
申込:https://forms.gle/L2pXW4xHG2rxGHLe9
応募条件:
・地域づくりや市民活動を実践している方
・全講座に参加できる方













