2026年9月1日火曜日

【レポート】第2回|企画づくり強化合宿@森の家みんみん

2026年8月15日(土)〜16日(日)、那覇市立森の家みんみん(首里儀保町・末吉公園内)にて、「なは市民協働大学院2026」の第2回講座、1泊2日の企画づくり強化合宿が開催されました。

今年度はチームビルディングに力を入れ、例年より早い第2回に合宿を設定。地域ごとにチームを組み、チームとして取り組むテーマを一つに絞り、次回・第3回講座(9月1日)までの地域調査プランを立てる――そこまでを2日間で一気に進めました。講師・進行は、石垣綾音さん(合同会社みるぶん/災害プラットフォームおきなわ)、森の家みんみんの藤井晴彦さん、災害プラットフォームおきなわの稲垣暁さん・宮道喜一さん、そして事務局の宮城が務めました。


「協働マインド/視点を変えて物事をみる」

1日目の午前は、事務局の石垣綾音さんによる講座①「協働マインド/視点を変えて物事をみる」からスタート。まずは、第1回の開講式でつくったチームでの「共通点さがし」の答え合わせから。「全員、献血したことがある」という共通点を見つけたチームがあり、「献血したことありますか、ってなかなか聞かない質問ですよね」と会場が沸きました。

2日間の流れを共有したあとは、グループごとのチェックイン。「今日の調子はどうですか」「合宿に期待していること、不安なこと」を一言ずつ。順番の決め方も「さっき喋っていた中で、いちばん最後に喋っていた人から」というユニークさで、場が一気にほぐれます。

そして、この合宿の肝となるレクチャーへ。2日間で身につけてほしいのは、次の3つの視点だといいます。

  • 直感……暑い、寒い、嫌い、苦い、美味しい、大好き。人間に本能として備わっているもの
  • 理性……「おかしな形をしているけれど、なんでかな」と考える力
  • 統合的(仮)……「あなたも私も、実は気づいていなかったことに気づけるかもしれない」

理性の例として語られたのが、火山性の黒い砂のビーチの話。砂浜も生き物もみんな真っ黒で、一瞬「ちょっと気持ち悪いな」と思ったけれど、「彼らはここで擬態して生き延びるためにこうなっているんだな」と気づく。人の話を聞くときも同じで、感情的に言われて驚いても「なぜその人はそう思うんだろう」と捉え直せる、と。

いちばん分かりにくいのが3つ目です。一緒に経験した先で分かるもの。私はこちらから・あなたはあちらから見えているから、組み合わせると違う形が見える。全体像が見えてきた――そういうもの。「これを分かるために、今日は合宿をします」。

「実はこれって、皆さんがすでに持っているものではあるんです。でも、いま自分がどの視点で物事を考えているのかに気づくことが、意外と難しいんですね」

続いて語られたのが「モード」の話。体調が悪い日、誰かと喧嘩した翌日は、来るもの来るものが嫌に感じられる。あまり好きではない人と話していると、いつもなら「いいね」と言いそうなことにも構えてしまう。「そういう自分のモードに気づいてほしいんです」。

そこで行われたのが、切り替えの練習。全員で同じお題を見ながら、最初の1分は「斜(しゃ)に構えて」思いっきりけなす。次の1分は180度変えて、思いっきり褒める。 お題は「真っ白なTシャツ」。「せーの、開始!」の合図とともに、各テーブルから一斉にダメ出しが飛び交いました。

「これをやると、最初の1分と後半の1分で、自分がどれだけ違う人間になれるかが体感できます」

この「モードの切り替え」が、2日目のフィードバックワークで効いてくることになります。


森を歩いて「見えていなかったもの」を探す

続いては、森の家みんみんの藤井晴彦さんによるワークショップ「森の司令ゲーム」。末吉公園の1周約400メートルのコースを歩き、カードに示された15のお題を、制限時間内にチームで探すというプログラムです。

ルールは4つ。①見つけたらグループ全員で確認する ②決められたコースの中で探す ③触らない・取らない・隠さない ④決めた時間までに戻ってくる(1分遅れるごとに1ポイント減点)。

お題は「岩から生えている木」「右と左が違う葉っぱ」「すじだけになった葉っぱ」「緑色のカタツムリ」「クモの網」「セミの抜け殻」「オキナワモリバッタ」など。カードの説明が、そのまま沖縄の自然のミニ講義になっていました。緑色のカタツムリ(アオミオカタニシ)は、実は殻が無色透明で、中の体が緑色だから緑に見えること。樹上性なので地面にはいないこと。沖縄は落ち葉の量が非常に多いのに落葉が積もらないのは、土壌動物の分解力が桁違いに強いから――といった話が、次々と繰り出されます。

このゲーム、もともとは「1クラス30人で森を歩くと、話を聞いているのは前の10人足らずだけ。後ろの人はついてくるだけ」という課題意識から生まれたのだそうです。参加者を受け身にさせない設計とは何か。そういう意味では、企画づくりのケーススタディでもありました。

印象的だったのは、藤井さんのこんな言葉です。

「子どもは誰かが見つけると、みんな同じ場所を同じやり方で探しはじめる。せっかくこれだけ人数がいるのに、同じパターンしか見えない。皆さんは大人なんだから、頑張ってください」

さらに、オオジョロウグモの網も、セミの抜け殻も、オキナワモリバッタも、以前よりずっと減っているという話も。「いる/いない」ではなく「減っている」と語れるのは、同じ場所を長く見つづけている人だけです。地域を見るとはどういうことか、森の中で体感する時間になりました。





ゲームのあとは「振り返り(盲点を探す)」「思い込みの再確認」。見えているつもりで見えていなかったものを、それぞれが確かめました。

「現状」「問題」「課題」を切り分けて考える

昼食をはさみ、午後の冒頭は、事務局の宮城による「ロジックモデルと課題設定」。ここで共有された3つの言葉の切り分けが、2日間を貫く背骨になりました。

  • 現状……いま起きていること。誰がどんな状況にあるのか
  • 問題……「ありたい姿(ビジョン)」と「現状」のギャップ
  • 課題……そのギャップを解消するために取り組むべきこと

「少子高齢化が課題です」「自治会加入率の低下が課題です」とよく耳にしますが、これらはいずれも「現状(現象)」にすぎません。その現状によって誰が、どんなことで困っているのか。そこを特定しないかぎり、課題は見えてこない。だから課題は、最初から見えているものではなく、あとから立ち上がってくるものなのだと確認されました。

あわせて、第8回の企画提案までを見通すロジックモデルも共有。「課題設定 → 企画 → 評価」の全体像を示したうえで、「いくら効率的に事業を回しても、そもそもの課題設定が適切でなければ狙いとする成果は得られない」――だからこの合宿では課題設定に丸2日をかけるのだ、と位置づけが語られました。


「気になる」から「仮説」「見立て」へ

地域ごとのチーム編成を経て、続いて稲垣暁さんによる講座②「地域調査と分析」です。

「思いは大事。でも“思いつき”のままにしない。思いつきを、確信・確証に変えていく。今日はその作業の仕方を学びます」

まずは、頭の中にあるふんわりした「気になる」を、とにかく文字にして外に出す。心理学でいう「メタ認知」です。「頭の中にあるものは目に見えない。外に出すと目で見えるので、そこで客観視ができる」。そして、それを一行で「つまり、こういうこと」とまとめてみる。新聞・メディアの世界で「ナットグラフ」と呼ばれる作業です。

講義を通してモデルになったのは、架空の受講生・末吉珉珉(すえよし みんみん)さん。安謝川流域で生まれ育ち、末吉公園のホタルの幼虫のフォルムと光に惚れ惚れするという設定の、自称「仮説見立てガール」です。彼女の「気になる」はこんな具合。

「東日本を中心にクマが人里どころか市街地にも出没しているのは、気候変動も大きな要因だと聞いた。そういえば沖縄にクマはいないが、南方系のクマゼミが沖縄固有種のナービカチカチ(リュウキュウアブラゼミ)を駆逐している感じがする。だとしたら、気候変動は深刻!」

ここから、なぜそれが気になるのかという動機を掘り下げ、予備調査(=「ガサ入れのアタリをつける」)で文献や取材の当たりをつけ、仮説を立て、全体像を見立てていく。そして最終的には「温暖化を防ぐ活動と同時に、暑さに適応したまちを考える必要がある」という課題設定にまでたどり着く。この一連の流れを、受講生も自分の「気になる」で実際に書きながらたどりました。

後半のテーマは「自己覚知」。「そんなの常識じゃないか」と思いがち、根拠なく断言しがち、物事を単純化して考えがち……といったバイアスのチェックリストに目を通し、自分の思考のクセを自覚します。あわせて、地域で話を聴くときの作法として、ソーシャルワークの4つの原則(受容・個別化・非審判的態度・自己決定)も紹介されました。

そして、こんなメッセージも。「災害時の地域復興計画や再開発でも、住民それぞれの利害は合わず、衝突したり平行線をたどるのが常です。それでも議論を積み重ねていく。こうしたプロセスをたどることで、地域は強くなり、再生していきます」。これから始まるグループワークは、その地域会議のプロセスを先取り経験する機会でもあるのだと。

チームを組み、テーマを一つに絞る

続いて、宮道喜一さんの進行でグループワークへ。一人ひとりがワークシートに「取り組みたいテーマ」「地域の現状と問題」「そのテーマを設定した理由(動機)」を書き出し、チーム内で丁寧に共有したうえで、チームとして取り組むテーマを一つに絞り込みます。

編成されたのは、マカ道(真嘉比)/チーム水物(安謝・曙)/中心市街地/小禄/首里/松川・大道/那覇西(若狭・天妃・曙)/真和志南の8チーム。1日目の最後には、各チームが「いま、どの入り口に立とうとしているのか」を発表しました。新旧住民のつながり、地下水と防災、観光地ゆえの交通、子ども会と居場所、道の狭さ、子どもの遊び場、多国籍化する地域での情報共有、全世代のゆるやかなつながり――それぞれの地域の顔がくっきりと見える発表となりました。


そして17時からはカレーづくり。2チーム合同・計4班に分かれ、各自が持参したお米を炊き、各チーム10食分をつくってバイキング形式で味わいました。夜はフリータイム。末吉公園までホタルを探しに出かける受講生の姿もありました。



2日目:思い込みにならない問題設定

6時半のラジオ体操と朝食、清掃を経て、2日目のグループワークへ。この日のゴールは「第3回講座までに、いつ・誰が・何を調べるのか」を決めることです。

冒頭、宮道さんが投げかけたのは一つの事例でした。地域に住む80歳の一人暮らしのおばあちゃんの「最近、歩いて10分のスーパーに買い物に行くのが、本当にしんどくてねぇ……」というつぶやき。さて、何が必要でしょうか。

チームからは、買い物代行、移動スーパー、ネットスーパーの講習会、コミュニティバス……とアイデアが出ます。ところがこれ、実は意地悪な問いでした。

「『何が必要だろうか』と聞いてしまっているので、全部が“取り組むべきこと”の意見になる。いきなり答えを出す前に、『なぜ、しんどいの?』と聴いてあげたい」

聴いてみると――足腰は丈夫。荷物も軽い。しんどい理由は「途中にあった公園のベンチが老朽化で撤去され、一休みできる場所がなくなったから」。しかも本人は「スーパーのレジの人とおしゃべりして、帰りに公園で休むのが毎日の生きがい」だと言うのです。

良かれと思った買い物代行は、おばあちゃんから外出の機会とおしゃべりを奪い、家に閉じ込めてしまいかねない。本当の問題は「道の途中に休める場所がないこと」だった――。思い込みで問題を設定し、解決策に飛びつくことの怖さを、鮮やかに示す事例でした。

もう一つ、「理不尽な校則はなぜなくならないのか」という事例も。表面的な事象の下には「昔の名残」「教師が管理しやすいから」「地域からのクレームを恐れて」といった大人の都合の構造がある。だからこそ「それは、一体誰のためにやっているのか?」と問い、当事者にも管理する側にも話を聴きにいく。すると「先生も生徒も苦しめている“地域の同調圧力”をどう変えるか」という、より本質的な課題が見えてくるかもしれない。

そして、この日いちばん強調されたのが、「They」から「I/We」への転換でした。「子どもたちがかわいそうだから」ではなく、「理不尽なルールに思考停止で従うことを強いる地域で、私自身が子育てをしたくない」「そんな同調圧力の強い町は、私にとっても息苦しい」。あなた自身の痛みに、どうつながっていますか――と。

「〇〇が困っている」という大雑把な見立てから、具体的な顔が浮かぶレベルまで解像度を上げる。それでもまだ妄想(仮説)であるという自覚を持つ。だから調べる。地域を知る3つのアプローチ(既存のデータ・資料/ヒアリング/フィールドワーク)が示され、「数えたら、必ず比べる。隣の校区と、那覇市全体と、10年前・20年前と」というコツも共有されました。

8チームの調査計画発表と、3色の付箋

午前の後半は、チームごとにリサーチプランづくり。校区別の統計データも配布され、「現状」と「問題」を行ったり来たりしながら、9月1日までに何を調べるかを詰めていきました。

10時半からは各チーム3分の発表です。聴く側にも役割がありました。1チームにつき必ず3枚の付箋を書く、というルール。初日に「白いTシャツ」で練習した、あのモードの切り替えの本番です。

付箋の色書くこと
ピンク斜に構えた質問・コメント
水色斜に構えないコメント
黄色発表を聞いての提案

「これは他のチームへのプレゼントです。自分たちにも返ってきますから、必ず書いてください」。会場のあちこちで、辛口の指摘とあたたかい提案が飛び交いました。

発表された調査プランも、実に具体的です。8月24日夕方に安謝エリアを歩く(チーム水物)、8月28日の放課後に小学校区を回る(小禄)、危ない場所の写真を日常的にグループLINEで共有する(首里)、モノレールに乗るたびに混み具合をメモする(中心市街地)、公園で子どもの様子を観察する(真和志南)、子どもの居場所を運営する団体に聴きにいく(松川・大道)、その日の夕方にある地域の豊年祭でメンバーと相談する(マカ道)、ボランティア団体に「本当は何を望んでいるのか」を聴きにいく(那覇西)――。



講師からのメッセージ

最後に、講師陣から受講生へのメッセージ。

稲垣さんからは、「誰が何に困っているのかを突き詰める。『子どもが無関心』というけれど、何に対しての無関心なのか、子どもとは誰なのか」。そして、自治会が持つ「字誌」を読むこと、沖縄にたくさんある大学の先生を頼ること、地域の資源を上手に使うこと。さらに「調査は自分たちのためだけのものではありません。調べたものは必ずお返しする。相手が知りたいこととかみ合えば、協力度もぐんと高まります」という助言もありました。


宮道さんからは、「『高齢化が進んでいる』はあくまで現象。それによって誰が何に困るのかまで踏み込んでほしい」。そして「調べていくと『全然違うじゃん』ということがたくさん出てきます。それは、違うと分かってよかったねという話。仮説どおりの声にだけ飛びつかず、フラットにいろんな声を受け止めてください」。最後に「皆さんは地域の当事者ですが、このプログラムの中では地域で学ばせていただく立場でもあります。地域への敬意を忘れずに」と結ばれました。

石垣綾音さんからは、AIを「壁打ち相手」として使うコツも紹介されました。「この地域の課題は何ですか」と聞くのではなく、「自分のこの解釈にバイアスがかかっていないか」と問いかける。稲垣さんのバイアスのリストを読み込ませたうえでコメントをもらう。そんな使い方なら、思考の幅を広げてくれるはずです。

おわりに

「現状」「問題」「課題」を切り分ける。思いつきを、確信に変える。誰が何に困っているのか、解像度を上げる。そして、それを「私たちの痛み」として引き受ける――。

2日間で受け取ったものは、決して軽くありません。それでも、森を歩き、カレーを囲み、夜遅くまで語り合った時間があったからこそ、チームはもう「一緒に地域へ出ていく仲間」になっていました。合宿を早い時期に置いた今年度の狙いは、ここにあったのだと思います。

次回・第3回講座は9月1日(火)、なは市民活動支援センターにて。各チームが実際に地域を歩き、聴いてきたことを持ち寄ります。「これは本当に課題といえるのか」を深掘りしていく回です。

まちに出た8チームが、どんな声を持ち帰ってくるのか。楽しみです!






2026年8月8日土曜日

【動画アーカイブ】第1回|開講式・オリエンテーション(2026)

 なは市民協働大学院2026の第1回講座「開講式・オリエンテーション」の動画アーカイブをアップします。

欠席された方は、この動画を視聴し、開講式の様子及び内容をご確認ください。

出席された方も学びの振り返りとしてご活用ください。




2026年8月6日木曜日

【レポート】第1回|開講式・オリエンテーション

2026年7月18日(土)、なは市民活動支援センター 会議室①にて、「なは市民協働大学院2026」の開講式が開催されました。

今年度は定員30名のところに36名もの応募があり、当日は多くの受講生が集まりました。地域活動をしている方、那覇市の職員、議員、市職員OBなど、多様な顔ぶれが会場に揃い、これから半年間、共に学び、共に企画をつくっていく仲間としての第一歩を踏み出しました。

司会進行を務めた事務局の石垣綾音さんからは、「今日は5時までの長丁場になりますが、初めましての方も多いと思うので、ある程度お互いを知り合って、仲良くなった状態で帰れる会にしたいと思っています」と、この日の趣旨が伝えられ、開講式の幕が上がりました。


学長挨拶:知念覚 那覇市長「みんなで支え合いながら地域づくりを」

まずは、なは市民協働大学院の学長でもある知念覚 那覇市長からご挨拶をいただきました。

市長は当日午前中に出席したという協働大学の入学式にも触れながら、「地域のつながりの重要性という認識が、若い世代にもどんどん広がってきていると感じました」とお話しされました。

なは市民協働大学院は、地域活動をしている方や議員、那覇市のOBなど、まさに「プロの養成講座」と呼べるような顔ぶれが集う場です。市長は、少子高齢化や地域コミュニティの希薄化が全国的な課題である中、特に都市化が進む那覇市においてはその傾向が顕著であり、自治会加入率の低下も進んでいる現状に言及されました。

平成27年の開校以来、これまでに265名の卒業生を輩出してきたという本大学院。卒業生の皆さんは、小学校区まちづくり協議会や自治会、市民活動団体など、地域のさまざまな場所で中心となって活躍されているそうです。

そして今年度は、記念すべき第10期。全8回の講座を通じて「課題設定力」「企画力」「コーディネート力」という、地域づくりに欠かせない3つの力を身につけてほしいと、受講生への期待が語られました。あわせて、各分野で活躍する魅力ある講師陣や、修了生で構成されるサポートチーム「チアーズ」による伴走支援についても紹介があり、「この大学院での学びを、ぜひそれぞれの地域や職場、活動の場へ持ち帰っていただき、多くの人と対話を重ね、仲間をつなぎながら実践してほしい」と、あたたかいエールが送られました。


来賓挨拶:城間幹子氏「地域を愛する心が、年々伝わってきています」

続いて、那覇市協働によるまちづくり推進協議会 会長の城間幹子さんよりご挨拶をいただきました。

前那覇市長でもある城間さんご自身も、実はこの大学院の修了生・協働大使のお一人。「皆さんの地域を愛する心、そこで何か活動したいという市民活動への興味だけでなく、実際に活動するんだという表情が、年々本当に伝わってきています」と、受講生への温かいエールとともに、地域への想いの輪が着実に広がっていることへの手応えを語ってくださいました。

城間さんが会長を務める「那覇市協働によるまちづくり推進協議会」は、愛称「協まち協(きょうまちきょう)」と呼ばれ、協働大使の皆さんの活動を横につなぎ、手を取り合って支えていく組織なのだそうです。

また、これから始まるグループワークについて、「希望とは違う地域やテーマのグループになることもあるかもしれませんが、そうしたグループになった方々からいろいろな考え方を聞いて、真似たり、蓄えたりすることをぜひこの大学院でやっていただきたい」とアドバイスも。城間さんご自身も受講生の皆さんをこれからサポートしていくと約束してくださいました。



記念撮影のあと、プログラム概要をたっぷり解説

学長・来賓のご挨拶の後は、恒例の全体集合写真を撮影。その後、事務局の宮城より、大学院のプログラム概要についてじっくりと説明がありました。


「上級編」としてのなは市民協働大学院

なは市民協働大学院は、那覇市と一般社団法人まなびとまちとが協働して取り組む「なは市民協働大学」の上級編。地域課題の解決に向けた動きを生み出せる「コーディネーター的視点」を持つ人材を発掘・育成することを目的としています。

修了後に目指す姿として、次の3つが掲げられました。

  • コミュニティの環境整備に資すること
  • 那覇市のコミュニティ政策に関わっていけるようになること
  • 地域コミュニティで活躍し、地域をつなぐことのできる人材になること

背景には、2026年3月に策定された那覇市「地域づくり推進方針」があります。同方針が掲げる「ゆるやかなつながりのある社会」の実現を担う人材を育てることこそが、この大学院のねらいなのだと説明されました。

那覇市の地域コミュニティの現状

概要説明では、那覇市の地域コミュニティが置かれている厳しい現状データも共有されました。自治会加入率はわずか14.2%、自治会が存在しない「空白エリア」は地域全体の37%にものぼるといいます。地域のつながりが希薄な状態では、災害時や困りごとが起きたときに助けを求める先がわからず、困っている人自体も見つけにくくなってしまう――そんな課題が指摘されました。

地域課題に「一発解決」はない。だからこそ、楽しさを掛け合わせる

複雑化・多様化する地域課題に「これをやれば一発解決」という魔法のような方法はなく、どうしても長期戦になっていきます。だからこそ、活動そのものに楽しさや魅力がなければ続けられません。「課題」と「楽しさ・魅力」を掛け合わせた企画を生み出し、それをつなげていける人材の育成こそが、この大学院の目標なのだと語られました。

そのために大切にされているのが「協働マインド」。誰か一人の力で解決しようとするのではなく、それぞれの得意・不得意を補い合いながら、仲間とともに取り組んでいく姿勢のことです。

そして、講座全体を貫くコンセプトが、学長(市長)・来賓挨拶でも出て来た合言葉、「じっくり・しっかり・ちゃっかり」。

  • じっくり……地域の状況をじっくり調査すること
  • しっかり……見つけた課題に対して、しっかりとした企画力で解決策を考えること
  • ちゃっかり……自分自身も楽しみながら、その楽しさを共有して、ちゃっかり仲間を増やしていくこと

今年度は例年よりもチームビルディングに力を入れており、第2回講座を合宿形式にして、早い段階からチームづくりを進めていくのが大きな特徴とのことでした。

全8回の講座の流れ

内容
第1回(本日) 開講式・オリエンテーション。お互いを知り合い、大学院の全体像を理解する
第2回 合宿(森の家みんみん)。チームビルディングと地域調査の視点を学ぶ
第2〜3回の間 グループに分かれ、担当エリアの街歩き・地域調査を実施
第3回 調査結果の発表。見つけた課題が本当に課題といえるかを深掘り
第4回 県外講師・永田宏和氏によるプログラム。企画づくりの視点を学ぶ
第5回 事務局による企画の考え方・アイデアの広げ方のレクチャー
第6回 コミュニティオーガナイジングの手法
第7回 ステークホルダーを招いたブラッシュアップミーティング。プレゼンのコツ
第8回 最終成果発表会・終了式

8回の講座に加えて、チームごとの話し合いやまち歩きといった「宿題」も発生するため、なかなかの活動量になる見込みとのこと。事務局からは「結構大変かと思います。最初に言っておかないと、あとから『こんなに大変だと思わなかった』って毎年言われるので」と正直に伝えつつも、「大変なんですけど、すごく楽しいし、学びも深いです」と、受講生の背中を押してくださいました。

修了要件は、全8回のうち70%以上(6回以上)の出席。やむを得ず欠席する場合は、録画やブログの記録をもとにレポートを提出することで出席扱いにできる制度もありますが、合宿など2日間にわたる講座を丸々欠席した場合は、この対応はできないとのことでした。


チアーズ紹介:受講生のすぐ隣を伴走する「応援団」

続いてのプログラムは、この大学院ならではの心強い存在、「チアーズ」の紹介です。

チアーズとは、大学院の修了生(OB・OG)を中心に構成される、受講生の応援団・伴走支援チーム。単なるアドバイザーではなく、地域づくりの現場ですでに実践を重ねてきたメンバーたちが、「じっくり・しっかり・ちゃっかり」を合言葉に、受講生のすぐ隣で一緒に汗をかきながら伴走してくれる存在です。

紹介にあたっては、チアーズメンバーが制作したというAI生成の解説動画・スライドが上映され、会場は笑いに包まれる場面もありました。

その後、チアーズ・講師陣が順番に自己紹介。

  • 鎌田耕氏チアーズNo.3/2019年度修了生):修了翌年の2020年に大学院で企画した取り組みを展開してコロナワクチン接種の支援を行なった。現在は協まち協として活動しています。
  • 神谷あゆみ氏(チアーズNo.4/2023年度修了生):企画団体「ミネコヤ」代表として活動を継続中。「愚痴も受け止めるので、一緒に楽しみましょう」と気さくにご挨拶。
  • 源河北斗氏(チアーズNo.5/那覇市消防局):防火・防災に関するアドバイスが得意分野。
  • 知念忠彦氏(チアーズNo.6/なは市民協議会):10年以上前の「まちづくり講座」で出会った仲間と「なは市民協議会」を立ち上げ、活動を継続。「ター坊と呼んでください」の一言に会場も和みました。
  • 古澤さや夏氏(チアーズNo.7/2024年度修了生)
  • 渡慶次正一氏(チアーズリーダー/2025年度修了生):チアーズリーダー就任の経緯をユーモアたっぷりに紹介し、「みんなと楽しくやっていきたい」と挨拶。
  • 安谷屋貴子氏(講師兼チアーズ):第6回講座の講師も務める予定で、「皆さんの活動を一緒に楽しみたい」とコメント。

頼れる先輩たちの存在に、受講生の皆さんも心強さを感じられたのではないでしょうか。

※今回出席できなかったメンバーは、また後日紹介します。

36名の想いが交差した、全体自己紹介

いよいよ、この日のメインイベントとも言える全体自己紹介の時間です。配布された受講生名簿を手に、マイクを順番に回しながら、36名全員が自己紹介をおこないました。

一人ひとりが、お名前、興味・関心のある地域、地域づくりでの関心事や悩みごと、いま取り組んでいることなどを一言ずつシェア。首里、真和志、新都心・おもろまち、中心市街地(国際通り・平和通り周辺)、那覇西(若狭・曙など港湾地域)など、那覇市内のさまざまなエリアから集まった受講生たちが、それぞれの地域への想いを語る姿がとても印象的でした。

面白いのは、この自己紹介がただ聞くだけの時間ではなかったこと。参加者同士は他の受講生の話を聞きながら「自分との共通点」をワークシートに書き込んでいきます。この共通点探しが、実は後半のビンゴ交流ワークへとつながっていく、うまく仕組まれた仕掛けになっていました。

自己紹介がひと段落したところで、約10分間の休憩がとられました。

先輩たちの挑戦に学ぶ、OB・OG活動紹介

休憩後は、この大学院で企画されたプロジェクトが、実際にどのように地域で育っていくのかをイメージできる、OB・OGによる活動紹介の時間です。

まちなかつながるプロジェクト「ご近所シェアるん♪」

まず登壇したのは、2025年度修了生の新里えりなさん(那覇小学校区まちづくり協議会/協まち協)です。

新里さんが紹介してくれたのは、昨年度の大学院で最終企画としてまとめた「ご近所シェアるん♪」というプロジェクト。メンバーは、那覇市公園管理課の伊佐さん、那覇市まちづくり協働推進課の渡嘉敷さん、那覇小校区まち協副会長(当時)の宮里さん、同校区在住のWebプロモーション会社経営者・田邉さんという、まさに市民と職員の混成チームでした。

「地域コミュニティが希薄化している」とはよく言われますが、それが本当なのかを確かめるため、中心市街地(国際通り・平和通り周辺、美栄橋駅付近)のマンション掲示板やイベント会場で、シールを貼ってもらう形のアンケートを実施(回答数は約140件)。その結果、「ご近所付き合いはゆるい関係が理想」「近所のイベント情報は事前に知りたい」という回答が、いずれも約92%にものぼることが分かったそうです。

この結果を受けて生まれたのが、2つの企画です。

  • ご近所シェアるん♪:LINEオープンチャットを使った「ゆるくつながる」ご近所掲示板。イベント情報・おゆずり情報・おとく情報の3カテゴリで発信し、エリアを絞ることで情報の親和性を高める工夫がされています。
  • ご近所マルシェ&タウンホールミーティング:美栄橋駅前ポケットパーク、緑ヶ丘公園、ジュンク堂、なはーとの地域4箇所と連携したリアルイベント。半年に1回の開催を想定し、現在実施に向けて準備が進んでいるとのことです。

さらに、那覇市公園管理課とはパークPFI事業に関連して、公園利用者のニーズ収集における連携(情報収集の依頼、結果報告、住民意見の施策への反映)についても検討が進んでいるそうです。

この企画は、東京大学主催の「COGチャレンジ(オープンガバナンス)」にもエントリーし、最終選考まで残るという素晴らしい実績も残しました(企業賞は逃したものの、アンケート投票では評価を獲得したそうです)。

新里さんは卒業後もFMなは(コミュニティFM)のラジオ番組(毎週金曜16時〜)に出演するなど、中心市街地での活動を継続中とのことで、「中心市街地のエリアに関わりたい方は、ぜひ声をかけてください」と、後輩たちへの心強いエールで締めくくってくれました。

つなぐ思い つなげる行動 つながる希望 ~つなぐ31万人グループへの挑戦~

続いて登壇したのは、2023年度修了生の波平聡さんと金城辰美さん(真和志地区)です。

お二人が紹介してくれたのは、「リアルドラクエ ~つなぐ310,000人グループへの挑戦~」という壮大な名前のプロジェクト。ちなみに310,000人とは那覇市の人口です。大きな目標を掲げながらも、実際には身近な地域から一歩ずつ、地道につながりを広げてきた歩みが語られました。

まず、松川地域の子どもの居場所イベントでアンケートを実施したところ、「ご近所付き合いはあるけれど、生活面で協力し合う関係は少ない」という結果が得られ、松川地域でも地域の希薄化が進んでいることが確認されたそうです。

そこで、交流の場をつくるために企画したのが「松川ビハナバザール」。実施にあたっては、すでに清掃活動を続けていた「松川公園愛護会」(会長:島袋氏)と連携し、まずは一緒に清掃活動から取り組むところからスタートしたといいます。

その後、松川小学校区まちづくり協議会を発足。さらに、上間・大道小学校区でも準備会が進行するなど、活動の輪は周辺地域へと着実に広がっています。

最近では、地域の高校生たちが企画した流しソーメンやものづくり体験ができる「こども縁日」に、大人たちが「応援隊」として協力するなど、世代を超えた交流の場が継続的に生まれているそうです。

お二人からは、「大変さを楽しみに変えて発信することで、仲間はどんどん集まってきます」「できることをできるだけ続けることが、より良いまちづくりにつながる」という、実践に裏打ちされたメッセージが受講生に贈られました。

先輩たちのリアルな挑戦の軌跡に、これから半年間の活動をイメージできた受講生も多かったのではないでしょうか。

共通点を探せ!ビンゴ交流ワークで会場が一体に

OB・OGの発表を終え、いよいよ実践編。自己紹介のときにワークシートに書き込んでおいた「他の受講生との共通点」を活用した、ビンゴ形式のアイスブレイクワークがおこなわれました。

参加者は会場内を自由に動き回り、共通点を持つ相手を見つけては「あなたはこういう方でしたよね」と声をかけ合い、サインをもらっていきます。もちろん、その場での自己紹介も忘れずに。一列そろった受講生から、進行役の石垣さんのもとへ報告に向かうという流れで進められました。

会場は一気に賑やかな熱気に包まれ、初対面の緊張感もすっかりほぐれた様子。このワークを通じて、受講生同士がより多くの人と直接言葉を交わし、これからの半年間をともにする仲間としての関係づくりの、確かな第一歩を踏み出すことができました。


次回は8月の合宿へ!事務局からのお知らせ

盛りだくさんのプログラムの締めくくりとして、事務局からいくつかの案内がありました。

まずはLINEオープンチャットへの登録案内。受講生名簿右上のQRコードから登録し、表示名は誰か分かる名前に設定するよう呼びかけがありました。「ノート」機能への簡単な自己紹介の投稿も依頼され、これは当日欠席した方への周知や、アカウント本人確認のためとのことです。

第2回講座(合宿)のご案内

項目

内容

日程

815日(土)9:00受付開始 ~ 816日(日)12:00解散予定

会場

森の家みんみん

内容

チーム決め・チームビルディング、地域調査、カレー作り 等

講師

森の家みんみん:藤井氏/災害プラットフォームおきなわ:稲垣氏・宮道氏

宿泊

和室、男女別の大部屋

持ち物

これまでの配布資料、着替え・タオル、汚れてもよい服(雨天時は雨具・長靴)、保険証、虫除け等、1日目昼食(各自持参)、お米1合(カレー用・各自持参)

差し入れやカレーに加えたい食材の持参も歓迎とのことで(強制ではありません)、和気あいあいとした合宿の雰囲気が今から目に浮かびます。今年度はチームビルディングを重視し、例年より早い第2回に合宿を設定したとのこと。詳細なしおりは後日オープンチャット配布される予定です。

那覇市からは、以下の3点もお知らせがありました。

  1. 「地域づくり推進方針」に関する勉強会・意見交換会を市内4地区で開催(内容はいずれも共通、都合の合う回への参加でOK)
  2. 仲井真小学校区まちづくり協議会(会長:渡慶次正一氏=チアーズリーダー)による地域ビジョン策定ワークショップの第1回を7月21日に開催
  3. 大学院受講生交流会(任意参加、カリキュラム外の企画):7月25日(土)17:00~20:00、なは市民協働プラザにて開催。第一部は交流・ミニ講話(対話・探究学習の視点について)、第二部は懇親会(アルコールも提供予定)

最後に、事務局・宮城より「今日は長丁場、お疲れ様でした。次に皆さんにお会いするのは、来週の交流会か、もしくは8月の合宿ですね。それまで元気にお過ごしください」との挨拶があり、盛りだくさんだった開講式は幕を閉じました。


おわりに

定員を大きく上回る応募のなかスタートした、なは市民協働大学院2026。第10期という節目を迎えた今年度は、記念すべき年にふさわしく、これまで以上に多様なバックグラウンドを持つ36名の受講生が集まりました。

「じっくり・しっかり・ちゃっかり」を合言葉に、地域の課題にじっくり向き合いながらも、楽しさを忘れずに仲間を増やしていく――。この日出会った受講生同士、そしてチアーズという心強い伴走者たちとともに、これから始まる半年間で、那覇のまちにどんな「ゆるやかなつながり」が生まれていくのか、とても楽しみです。

次回は8月15日・16日の合宿。まちなかつながるプロジェクトをはじめとする先輩たちの挑戦に続く、新たな物語がここから始まります。今後のレポートもどうぞお楽しみに!



2026年7月19日日曜日

【参加者募集!】なは市民協働大学院2026 大交流会

昨日(7/19)、2026年度の開講式がありました。今年度は、36名の方が大学院を受講します!

開講式の様子はまたあらためてレポートしますが、今回は「大交流会」の告知をさせていただきます。

これまで「なは市民協働大学院」では、多くの修了生を輩出し、みなさん各地域で、各分野で活躍されています。

せっかくなので、各期の修了生、そして現役の受講生が知り合い交流する場をつくりたい!ということで、まちづくり協働推進課の方で「大交流会」を企画しています。


現役の受講生はもちろん、過去の修了生にもぜひ参加いただき、交流を深めたいと思います。

よろしくお願いします!





【なは市民協働大学院2026 大交流会】

つながりが地域の”未来”を創る

出会う・語り合う・創り出す

〜”つながる交流の輪”を広げよう!〜


日時:7月25日(土)

第1部 17:00-18:30(受付16:45〜)

第2部 18:30-20:00


会場:牧志駅前ほしぞら公民館ホール


内容:

第1部 自己紹介・グループディスカッション(無料)

第2部 交流プログラム(軽食(アルコール有り)会費:1500円)


申込:(下の申込フォームより)

https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSe0BPqpBxuKmvV4k5lFI_pvMXD5HKhGd5b_NMVgm1TGMaqXFg/viewform


問合せ:那覇市まちづくり協働推進課

TEL 0980861-3846



2026年7月3日金曜日

【レポート】公開講座「那覇における地域づくりを考える」|2026

2026年6月21日、なは市民協働プラザにて、なは市民協働大学院2026の公開講座が開催されました。参加者は49名。

講座では、大学院のプログラム説明に続き、修了生団体による活動紹介、そして南信乃介氏(NPO法人1万人井戸端会議 代表理事/前・繁多川公民館 館長)と宮城潤氏(一般社団法人まなびとまちと 代表理事/前・若狭公民館 館長)によるトーク「那覇における地域づくりを考える」が行われました。司会は石垣綾音氏(合同会社みるぶん 共同代表)が務めました。


なは市民協働大学院とは

なは市民協働大学院は、地域課題の解決に向けた動きをつくり出す「コーディネーター的視点を持った人材」の発掘・育成を目的に、那覇市が主催する講座です。

前身にあたる「なは市民大学」は2009年に開講し、翌2010年に「なは市民協働大学」へと改称されました。その上級者編・実践編として2015年度に「なは市民協働大学院」が始まり、2016年度には那覇市第5次総合計画に対する市民意見を取り入れる場としても機能しました。

受託団体はこれまで、南信乃介氏がアドバイザーを務めた2017年度、南氏の1万人井戸端会議がまちなか研究所わくわくと連携して受託した2018年度、宮城が事業統括責任者を務めた地域サポートわかさが受託した2019〜2025年度を経て、2026年度は宮城が新たに立ち上げた一般社団法人まなびとまちとが受託しています。この間、修了生は各地域・各専門分野で活動を続け、協働によるまちづくりを推進する人材の裾野を広げてきました。



講座冒頭では、那覇市の地域づくりを取り巻く状況についても説明がありました。

自治会加入率は13%台まで低下しており、市内の約37%のエリアには自治会そのものが存在しません。

こうした状況の中、地域づくりの新たな枠組みとして「小学校区まちづくり協議会」の設立が進められており、現時点で17協議会・5準備会が立ち上がっています。

設立から10年を経て、その位置づけは「組織をつくること」から「ゆるやかなつながりを育むプラットフォームにすること」へと重点が移りつつあるとのことです。




こうした流れを踏まえ、那覇市は今年3月、市民参加のワークショップや庁内議論を経て「那覇市地域づくり推進方針」を策定しました。

なは市民協働大学院は、この方針に基づき地域コミュニティで活躍し、地域コミュニティをつなぐ人材を育成するプログラムとして位置づけられています。

大学院が掲げるコンセプトは「じっくり・しっかり・ちゃっかり」の3つです。地域の現状を丁寧に観察し課題を発見・定義する「じっくり」、発見した課題をもとに実現可能な企画を立案する「しっかり」、課題に取り組みながらも自分自身や周囲を楽しませ仲間を増やしていく「ちゃっかり」。



これらは、地域で活動する人々が自然に踏んでいるプロセスを体系立てたものだと説明されました。

2026年度は、例年より早い第2回に1泊2日の強化合宿を組み込み、早期のチームビルディングを図る点が特徴とされています。

全8回の講座を通じて、まち歩きによる地域調査、課題設定、企画づくり、コミュニティ・オーガナイジングの手法などを学び、第8回の最終成果発表会・修了式に至る構成となっています。

修了後も、東京大学主催の地域課題解決アイデアコンペ「COG・チャレンジ‼オープン・ガバナンス」への挑戦など、活動の継続を後押しする姿勢が語られました。


OB/OG活動紹介

講座の中盤では、修了生による活動紹介が行われました。

首里石嶺地域で活動する「ミネコヤ」は、2023年度・2024年度の修了生を中心に2024年から活動する団体です。

自治会が組織されていないエリアが多く、子どもの居場所も少ないという石嶺地域の課題を受け、放課後の子どもの居場所「わくわく嶺っ子クラブ」を企画・運営しています。拠点は、これまで利用が少なかった石嶺町民会館を主に活用し、2025年度の夏休みには1週間にわたって施設を朝から夜まで開放し、ワークショップや映画上映会、防災キャンプなど多様な企画を実施しました。

PTAや映画監督、アート系団体など、常に誰かと連携しながら活動する姿勢を大切にしているとのことです。COG2024ファイナリストに選出されています。


真和志地域で活動する「真和志well-being」は、5名のまちづくり協議会関係者によるチームです。

真和志小学校周辺で保護者の送迎による交通混雑が発生し、通学路の安全確保が課題となっていることを受け、2025年のハロウィンに地域住民とともにコスプレ姿での旗振り活動を実施しました。

この経験から生まれた企画が「Let's てくてく登下校‼」で、地域全体で子どもが歩きたくなる環境づくりを段階的に進めています。COG2025では全国63チーム中の最終審査13チームに選出され、「JIPDECサポーティングパートナー賞」を受賞しました。


続く質疑応答形式のセッションでは、両チームからフィールドワークやヒアリングを企画づくりの軸に据えたこと、地域住民や既存の組織との連携が比較的スムーズに進んだこと、拠点となる場所の有無が活動の継続に影響することなどが語られました。

市民活動を継続する秘訣としては、出入りしやすい活動の形にすること、無理のない最小単位から始めることが挙げられました。




対談「南信乃介×宮城潤 那覇における地域づくりを考える」

後半は、南信乃介氏と宮城潤による対談に移りました

両氏の付き合いは約20年に及び、南氏が20代半ば、宮城氏が30代半ばで若狭公民館の館長になった頃、社会教育の勉強会で出会ったのが最初とのことです。以来、那覇市の公民館長仲間として、それぞれ異なる立場から那覇のまちづくりに関わり続けてきました。


宮城氏は社会教育とは異なる「アート」の領域(前島アートセンター)から地域づくりに入ってきた経歴を持ちます。一方、南氏は子ども会・ジュニアリーダー活動を通じて幼少期から地域づくりに触れ、大学でも持続可能なまちづくりを学ぶなど、社会教育の道を歩んできました。

両氏は、活動へのアプローチの違いについても語りました。

宮城氏は自らを「物事を斜めに見るひねくれ者」と表現し、光が当たっていない層、たとえば在住外国人やシングルマザーなどへの気づきを起点に活動を展開するタイプだと述べました。

これに対し南氏は、地域の人々が大切にしてきたもの、たとえば豆腐づくりの歴史のようなものを起点に、そこに共感する人たちを巻き込みながら活動を広げていくタイプだといいます。

両氏は、どちらのアプローチが優れているというものではなく、地域性や個性によって入り口が異なるだけで、地域づくりには両方が必要であるという点で一致しました。


具体的な事例として、繁多川公民館では地域の自治会と相談しながら民俗学的な聞き取り講座を企画したところ、住民への聞き取りが3年間続きました。

その過程で、地域内で戦後多くの家庭が豆腐づくりを営んでいたこと、それが戦後復興を支える産業であったことが明らかになり、小学校の総合学習に発展。地域住民が先生役となって大豆栽培から豆腐づくりまでを行う恒例行事へと成長したとのことです。

この取り組みを通じて、定年退職後の男性が地域活動に関わるきっかけも生まれたと紹介されました。


若狭公民館では、地域に多い在住外国人やシングルマザーなど、公民館の講座に必ずしも来ていなかった層への働きかけが紹介されました。

子育て支援団体を通じて当事者団体と連携する取り組みや、在住外国人と地域住民が出会い理解し合う機会をつくる取り組みが、コロナ禍を経て支援活動として広がっていったといいます。


活動の進め方について、南氏は、確証が持てなくても「3割ほど見えたら試しにやってみる」という姿勢で公民館活動を一種の社会実験として捉えていると説明しました。

宮城氏は、気づいたことに対して「旗を立てる」というイメージで、まだ課題として認知されていないニーズを可視化する取り組みを重視していると述べました。


必要な人材や姿勢についても意見が交わされました。

南氏は、互いに言いたいことを言い合える関係性があれば、相談先を複数持つことでどうにかなると述べました。

宮城氏は「頼りなくあること」の大切さを挙げ、自分で抱え込まず素直に助けを求められる状態が、周囲の協力や新しいつながりを呼び込むと語りました。

また、気づいたことを発信するだけでなく、それを受け取っていない人まで巻き込んで連れてくる存在の重要性も指摘されました。


学びと活動の関係については、宮城氏が「学びと活動の循環」という言葉を挙げ、知識を蓄えてから活動に還元するというよりも、実際にアクションを起こす中で必要な学びが後から生まれてくると述べました。

課題はネガティブなものではなく取り組むべきことであり、解決というよりも次々と新しい課題へと展開していくものだという見方が示されました。

南氏は、小さなアクションを起こした経験を持つ人が、その経験を通じて地域環境をより良い方向に変えていく力になると述べ、コロナ禍では支援を受けた当事者自身が新たな担い手として動き出す様子が見られたと振り返りました。


今年3月に策定された「那覇市地域づくり推進方針」についても触れられました。

南氏は方針の中のコラムで繁多川公民館エリアの自治の実情を執筆したことを紹介し、宮城氏は、地域だけで頑張るのではなく行政とも協働しながら進めていく点が方針の重要なポイントだと述べました。

方針の概要版に掲載されている「新しい地域のつながりのイメージ」図について、宮城氏は自身が長年提唱してきた「ゆるやかなつながり」の考え方が採用されたものだと説明しました。

単一の地域組織への加入を前提とするのではなく、一人ひとりが興味や関心に応じて複数のコミュニティに緩やかに属し、それらが重なり合うことでセーフティネットとして機能するという考え方です。



近況と今後の展望

南氏は今年3月に繁多川公民館の館長を退任しましたが、指定管理者であるNPO法人1万人井戸端会議の代表理事は継続しており、引き続き公民館に顔を出しているとのことです。今後は、妊娠・出産や看取りなど、地域との関わりが薄くなりがちなライフステージにおいて、住み慣れたコミュニティで安心して関わり続けられる地域のあり方に取り組みたいと語りました。

宮城氏も同じく今年3月に若狭公民館の館長を退任し、一般社団法人まなびとまちとの代表として、なは市民協働大学院の企画運営に加え、那覇市の地域づくりコーディネーター業務を受託していることが報告されました。


公開講座は、なは市民協働大学院のプログラム紹介にとどまらず、修了生団体の具体的な活動事例と、公民館長として20年にわたり那覇の地域づくりに携わってきた両氏の対話を通じて、那覇における地域づくりの現在地を振り返る機会となりました。




なは市民協働大学院2026は、受講生を募集しています。
地域を楽しくしたい!という方は、ぜひお申し込みください!



なは市民協働大学院2026

申込締切:7月10日(金)まで

受講料:5,000円

定員:30名 ※応募多数の場合、申込内容等を勘案し選考します

申込:https://forms.gle/L2pXW4xHG2rxGHLe9

応募条件:

・那覇市在住・在勤・在学の18歳以上の方 
地域づくりや市民活動を実践している方 
・全講座に参加できる方