2024年10月21日月曜日

【レポート】第6回講座 共感を広げるコミュニティ・オーガナイジング

 2024年10月16日(水) 18:30〜21:00

場所:なは市民協働プラザ 参加者:受講生26名、チアーズ6名

第6回講座「共感を広げるコミュニティ・オーガナイジング」を実施しました!


大学院最後のインプット回!

ぜひ自分のものにして、企画や関係者とのコミュニケーションに活用していきましょう!


プログラム

1. 講義「共感を広げるコミュニティ・オーガナイジング」

2. 演習「ストーリーを作ってみよう!」

3. 全体共有とまとめ

4. 事務連絡


1. 講義「共感を広げるコミュニティ・オーガナイジング」


講師は、チアーズでもある安谷屋貴子さんです。


これまで講座やグループワークの中で企画を練ってきて、その企画を誰とやるのか、誰に来てほしいのか、人の顔を思い浮かべ始めるタイミングかと思います。

今回は、そんなみなさんにぴったりの「コミュニティ・オーガナイジング」という手法を学びます。


講義の後、他のチームの人と組んで、自分達の企画について伝え合うグループワークがあります。

みなさんの企画の意図や思いがちゃんと伝わるか、チャレンジしてぜひ自分で確認してみましょう!

※今日の内容は、個人のこれまでの経験や出来事も話されるので、個人的な話はこの場に止めることを約束しましょう。


〜コミュニティ・オーガナイジングとは〜

コミュニティをオーガナイズ(組織)するもの。

市民の力、お金を持っていない、権力を持っていない人でも社会を変えるための方法であり考え方です。

皆さんも、一人では達成できなかったり、地域の人に協力してもらいながら進めていくような企画を考えていると思うので、役に立つのではないかと思います。

今日の講座では「誰と」がクリアになるはず!


まずは講師の安谷屋さんから自己紹介。

なぜコミュニティ・オーガナイジングに魅力を感じているか、経験を踏まえたお話がありました。


そして、コミュニティ・オーガナイジングの考え方をわかりやすく理解するために、「スイミー」の話。


一匹だけでマグロに立ち向かっても食べられてしまうけれど、たくさんの仲間と力を合わせれば追い払うことができます。


コミュニティ・オーガナイジングは20世紀初頭のアメリカで、社会的弱者の声を社会に届ける取り組み、実践から生まれ、体系化されました。


「誰かに助けてもらう」「誰かが助けてくれる」ものではなく、社会で起こっていることが自分にとって何故許せないのか、我慢できないのか、それを共有し、共感した人たちと共に活動し、エンパワーメントが生まれます。


〜コミュニティ・オーガナイジングの事例〜

公民権運動の足がかりとなった、モンゴメリーのバスボイコット運動の話を事例としてお話しいただきました。

一人の黒人女性が現状に立ち向かったところ、排除されてしまいました。そこで多くの人が立ち上がりボイコットをしたことで、バスでの白人・黒人の隔離がなくなりました。そしてそれをきっかけに他の分野にも広がり、結果として公民権法の成立を後押ししました。

コミュニティ・オーガナイジングは、パワーの不均衡を解消する一つの手法です。

課題の当事者たちが主体となって持っている力を行使することで課題を解決する。そして一つ解決すると、「他にも反映できるかもしれない」と感じられ、コミュニティが育っていきます。


〜コミュニティ・オーガナイジングのステップ〜

そのためのステップが、以下のようなものです。

1. ストーリーを語る

2. 関係を作る

3. チームを作る

4. 戦略を作る

5. アクションする

→組織ができる


改めて聞くと、普段からしているような何気ないことかもしれませんが、それを意図的に効果的に取り組むことが重要です。


これを実現していく為に必要なリーダーシップのスキルの最初のひとつが「パブリック・ナラティブ」です。


〜パブリック・ナラティブとは〜

パブリック・ナラティブ=共感を呼ぶストーリー


パブリック=公の

ナラティブ=ストーリー/物語

自分ひとりでは難しいことを他者と一緒に叶えたいときに、一緒に取り組みたい相手に向かって語るストーリーがパブリックナラティブ(公のストーリー)です。


コミュニティ・オーガナイジングについて書籍にまとめたり、トレーニングを体系化したりしている人や組織はいくつかあります。

講師の安谷屋さんが学んできたものは、マーシャル・ガンツ博士が体系化したものです。


ガンツ博士は公民権運動や農場労働者の労働環境を良くする運動に関わる中で、どんなにいい戦略を考えても誰もついてこない経験をしました。その経験を通して、他者が、どんなに不確実な状況(抵抗したら仕事を失うなど)でも、目的達成のために行動できることに、自分自身が責任を引き受けることが、コミュニティ・オーガナイジングにおけるリーダーシップだと定義しました。


では、私たちはどういう時に行動を起こしたくなるでしょうか?


それは、戦略(頭・認識的な理解)とナラティブ(心・感情的な理解)が揃った時です。
例えば、データだけ並べられて話をされるのと、経験や感情を含めた話だと伝わり方が違います。

その時、「やらされる」ではない「やりたい」という主体性が引き出されることになるのです。


人々が意思決定(例えば、その企画や取り組みに賛同して、参加するかどうか)を行う際には、感情が重要な軸の一つになります。

人々の価値観に働きかけ、感情を想起させることで、行動に結びつけるのです。

ナラティブを語り、経験とその時の感情を共有することで、行動したい気持ちを引き出すイメージです。


その時、パブリックナラティブの手法を活用することで、行動を阻害する感情を、行動を促進する感情が乗り越えるサポートをします。


〜パブリックナラティブの構造〜

1. ストーリー・オブ・セルフ

私はなぜこの課題に取り組むのか、自身の価値観、思い、私が今なぜここにいるのか、などを語ります。

2. ストーリー・オブ・アス

私たちが共有する価値観。共有する価値観と経験、やってきたことをベースに語ります。

例)部活の大会で、「私たちは夏休み一回も休まずに練習してきたよね、絶対勝てる!」と共有する経験を語り、そこにある大事な思い(価値観)を共有することで、一体感を生み、エネルギーを増大させることができる。

3. ストーリー・オブ・ナウ

価値観に対する緊急性と取るべき行動を語ります。

みなさんは、今課題を特定し始めていると思いますが、それがどれくらい緊急性が高いものなのか。そしてそれに対して具体的にどのような行動を取れるのか。その行動がどのように変化につながるかのストーリーを語ることが重要です。

上記3つのどのパートも、聞き手がそのシーンを頭に思い浮かべ、その時の感情を一緒に感じられるように情景を語ることがコツ。


ここで、実際のパブリック・ナラティブを聴いてみましょう!

ということで、昨年度受講生で今年度はチアーズとしても関わっていただいている「たのしむぞ06」のりささんからお話しいただきました。


その後、前述の構造に合わせて、安谷屋さんからコメント。

それぞれどの話がどの構造(ストーリ・オブ・セルフ/アス/ナウ)に当てはまるのかを説明しながら、抽象化させたポイントを解説してくださいました。

今回の主なポイントは、、、

1. 個人名や固有名詞が、情景やストーリーの細部を描くことを助けます。
→同じ場にいない、その人を知らなくても、場面を思い浮かべることができます。全員に伝わるように抽象度を上げると、かえって聞く方は共感しづらくなってしまいます。

2. その場にいる人たちで共有できるような想いを感じられるシーンを語る

情景を語る時のコツとして、ストーリーを作る時に絵を描くことも効果的です。


まずは、ストーリーを伝える相手は誰なのかを具体的に想定します。

ストーリーは、ナウから考えます。緊急性、ビジョン、そして求めるアクションなどを整理していきます。その次になぜ自分にとって緊急なのか、自分の価値観を伝えるセルフ。そしてナウとセルフを繋げていくアスを作ります。

このとき、実は抜けがちなのは、アスです。

課題の緊急性をナウで伝え、そこに課題意識を持って取り組む背景となるセルフを語りますが、その二つを、そして語りかける人と自分をつなげるのが「アス」。

みなさんの取り組みは、一人でなくさまざまな人を巻き込むことが重要である以上、「アス」は欠かせません。


ここから、具体的にパブリック・ナラティブの作り方を学んでいきます。


2. 演習「ストーリーを作ってみよう!」


まずは、普段のチームと違う人3人で集まり、それぞれの企画について、今教わった「パブリック・ナラティブ」の手法を使い語ります。

それに対して、聞いている他の二人は「どこに共感したか、どんな話があるともっと協力したいと思えるか」などをフィードバックします。

今回のワークショップは、こんなルールを設定しました。




3. 全体共有とまとめ

続いて、いつものチームに戻り、代表者を一人選出。その方が皆さんの前で自分たちの企画に合わせたパブリックナラティブを語りました。

それに対して、安谷屋さんが一つずつコメント。


安谷屋さんから投げかけられたコメントをご紹介します。具体的な一つのストーリーに投げかけられたものですが、全員に通ずる重要な示唆が含まれていると思うので、ぜひご覧ください!

・情報発信の具体的な方法は決まっていますか?

・つくりたい企画とご自身の背景のつながりを感じられて、共感できました。

・このストーリーで大切にしたい価値観はなんですか?

・この企画は、誰とやりたいですか?語りかける相手が具体的になると、より巻き込めるようなストーリーになると思います。

・あなたのストーリーを聞いて「参加したい」と思った人は、具体的にどんな協力ができますか?具体的に取って欲しいアクションまであると、その場で行動を引き出すことができます。

・なぜその人たちに語りかけるのか。そこに共通の経験やそこで共有した価値観があるとよりGOOD。聞き手が「なぜ私が協力する必要があるのか」を具体的に感じられることがポイントです。

・その企画が実行できると、どんな良いことが起きますか?どんな変化が起きますか?ぜひ具体的に語ってみましょう。

・自分では「セルフ」のつもりで語ったものが、聞き手も共感することで結果的に「アス」になることがあります。

・「地域の人たちが仲良くなれる」とは、具体的にどのような状態でしょうか?その情景がより鮮明になることで、共感を得られるようになります。

・「びっくりした」という感情が語られたことで、共感でき、緊急性が伝わってきました。

・もし、企画が具体的に決まっていないのであれば、今この場で何ができるか、どんなものなら「YES」をもらえるか。せっかく語る場があるのであれば、ぜひそこまで引き出せるように組み立ててみましょう。

・課題を感じるようになったきっかけとしてヒアリングをしたと思うので、その話はどこの、どんな背景を持った、どんな人から聞いたことなのか、まで語ると情景が共有しやすくなります。



全体共有の後、印象に残ったことや感じたことなど、数名からコメントをいただきました。

一人は、ストーリーを聞いて浮かんできたアイディアをお話しいただきました。

これに対して、安谷屋さんは「まず語ってみたからこそ出てきたアイディア。綺麗に語るよりも、語りながら、どんな風に語ると相手に伝わるのか、相手の反応がどうなのかを考えていくことが大事」だとお話ししました。

もう一人は、他の人のストーリーを聞きながら、ご自身の中で「セルフ」をうまく整理できなかったことを話してくださいました。

これに対しては、「今回『セルフを整理できなかった』『他の人できててすごい』という部分を感じた人がいるかもしれない。個人ワークでは気づけないことでもあり、これも誰かと一緒に取り組むことの重要なポイントです」と語りました。


最後に、講師の安谷屋さんからのまとめです。

これから企画をブラッシュアップしていくにつれて、どんどん具体的な人や組織などを巻き込んでいきたいと思うはずです。これからの企画作りでこの手法も生かしながら、共に活動したい仲間を増やしていってください。

パブリック・ナラティブとは「表面のツヤ出し、ではなく 『内面の輝き』を引き出すもの」です。

1人では小さなチカラだけど、みんなで力を合わせていく取り組みにぜひ繋げていってください。


4. 事務連絡

第7回は「企画ブラッシュアップ」。

そして、「地域の方やこういう人たちとやりたいなと思う人を実際に呼んで仲間にしてしまおうの会」です。といことで、そこに来てほしい人、つまりこれから企画を共にしたいと思っている方々に声をかけてきてください!

その時に必要なのは・・・。もちろん、今回学んだことの実践!声かけをする人を具体的に思い浮かべて、その方に仲間に加わっていただけるように、ストーリーをつくり実践しましょう!

※前日11月4日までに、参加される方のご報告をお願いします。


また、11月19日(火)は自主ゼミ!ということで、最終発表前最後のブラッシュアップ+チアーズや事務局からフィードバックを受けられる回です!

講座と同じく18:30〜21:00@なは市民協働プラザで行いますので、是非是非ご参加ください!